この記事はそんな悩みにお答えします。
主にインドで信仰されているヒンズー教。名前は聞いたことがあるけれど、他の宗教との違いやタブーは知らない人も多いはず。
そこで今回は、ヒンズー教の歴史から押さえておくべき特徴などを超丁寧に解説していきます。
ちなみに、ヨガも瞑想もヒンズー教由来だと知っていましたか?さらに、日本で信仰されている仏教は、ヒンズー教から派生したものだと知っていましたか?
そんな日本との関係性なども3分で読めるようにまとめたので、ぜひ最後まで読んで知識を身につけてください!
そもそもなぜ宗教を知る必要があるのか
具体的な話の前に、そもそもなぜ世界の宗教についての知識を深める必要があるのか説明します。理由はズバリ、宗教がグローバルで活躍する教養の土台だからです。
国によって歴史や文化、価値観が異なりますが、その根本にあるのが宗教であり、時には政治にも大きな影響を与えます。
例えば、アメリカ大統領選では支持を得たい有権者の宗教によって政策は変わってきますし、それによって世界経済も動いていきます。
また、全知全能の神が人を作ったという知識を当たり前と感じるキリスト教信者は、鉄腕アトムやペッパーのような人型ロボットに嫌悪感を示す人もいます。そう言われてみれば、アメリカの映画でロボットが出てきてもサイボーグ感であふれていますよね。
アメリカのロボット
それくらいナイーブな宗教の知識を知らないと将来海外で恥ずかしい目に遭ってしまうので、最低限の知識を身につけておきましょう。
ヨーロッパに旅行した時も、神道や仏教について聞かれる場面が多いです。そんな時に知らないだと会話が進まずもったいないです。
ヒンズー教の概要
実際にヒンズー教の概要を、以下の3つの観点から紹介します。
①ヒンズー教の歴史
②ヒンズー教の聖典
③ヒンズー教の聖地
それではひとつずつ見ていきます。
ヒンズー教の歴史
現在ヒンズー教は、ほぼインドとネパールでのみ信仰されていますが、インドの人口が多いこともあって全世界で約10億人の信者がいます。宗教の割合で見ると、キリスト教・イスラム教についで世界第3位の信者数を誇ります。
そんなヒンズー教ですが、起源は古代(紀元前3000年頃)まで遡ります。当時のインドにあたる地域にはドラヴィダ人が住んでおり、彼らは自然崇拝に近い形で多くの神を崇めていました。
ここらへんは唯一神を信仰するキリスト教やイスラム教とは異なりますね。
さて、それから1500年ほど経った時に、現在のイランあたりからアーリア人が移住してきます。アーリア人も多神教で様々な神を崇拝していたのですが、先住民のドラヴィダ人を支配しつつ自らの信仰を布教していきました。
そこでできたのがバラモン教(ヒンズー教の前身)です。
イエスやムハンマドのような預言者もおらず、神の啓示もあったわけではないので、独占的に神の祭事を担当する人=バラモンという身分が生まれ、その名がつけられました。
祭事を行う人=バラモン
アーリア人はインドに住んでいたドラヴィダ人を支配した部族だったので、“支配者を優遇する”という考え方が根底にあり、それによってカースト制度が誕生します。
カーストでバラモンという身分は最上ランクとなり、圧倒的な権力を与えられました。その後、バラモン教はインド現地の様々な宗教を取り込んでヒンズー教として名前を変えて生まれ変わりました。
そして、ときは進んで紀元前500年。かの有名なお釈迦様が、圧倒的な権力を保持するバラモンを批判して新たに仏教を開いたのです。こうしてヒンズー教を母体として仏教が誕生したのです。
ヒンズー教に登場するお釈迦様
その後7世紀になるとイスラム教が中東で誕生し、インドにも勢力を拡大してきました。
そして、16世紀にはイスラム教を国教とするムガール帝国にインドは征服されてしまいます。この時にできたのがインドのタージ・マハルです。あれはインドにありますが、征服された時のイスラムの名残なのです。
イスラム系建造物 タージマハル
ただし、イスラム教とは改宗を強制しないので、インドでは昔のままヒンズー教が根強く残っているのです。
ヒンズー教の聖典
ヒンズー教の聖典はヴェーダと呼ばれる本です。
サンスクリット語が書かれた書物
その中では、人間が解脱して最終的に宇宙と結合して一体化することこそ究極の状態だ、という梵我一如と呼ばれる考え方が解説されています。
ヒンズー教も仏教もそうなのですが、人が死んだ時に再度生まれ変わる”輪廻転成”という考え方があります。
しかし、そうやって何度も生まれ変わるよりも、そのループを抜け出してさっさと天国へ行くことが目標で、それを解脱と呼ぶのです。
ちなみに仏教では瞑想で解脱を目指すのですが、ヒンズー教では解脱するためにかの有名なヨガを行います。
最近話題のヨガ
現代ではダイエットやシェイプアップが目的で行われているヨガですが、本来は解脱をするための手段だったのです。
ヒンズー教の聖地
ヒンズー教の聖地といえば、インドのガンジスです。
聖典では神聖な川と名付けられており、多くの信者がガンジス川で沐浴を行い、人が亡くなった時は遺灰を川へ流します。
インド ガンジス川
それくらい生活の一部となっているのです。
ヒンズー教の特徴
ヒンズー教の特徴は以下の3つ。
①とにかく神様が多い
②カースト制度が存在した
③仏教と深い関係がある
それではひとつずつ見ていきます。
とにかく神様が多い
ヒンズー教は神様がたくさんいる多神教の宗教です。そんな中でも重要とされる神様が、
①ブラフマー(この世を作った神)
②ヴィシュヌ(この世を維持する神)
③シヴァ(この世を破壊して再生する神)
です。ちなみに②のヴィシュヌ神は10の化身があり、そのうちの一つがお釈迦様(仏教を作った人)と言われています。
そんなこともあってインドでは、「仏教ってヒンズー教だよね」という考えかたが浸透しています。
そして③のシヴァの息子とされるのが、夢をかなえるゾウで人気となったガネーシャです。何だか見てて和む神ですし、自分の人生を再設計するいい機会となった名著です。
カースト制度が存在した
ヒンズー教と切っても切れないのがカースト制度です。
元をたどればバラモン教の頃からあったとされますが、身分を分けるために以下の4つの区分を作りました。
①バラモン(司祭階級)
②クシャトリア(貴族階級)
③ヴァイシャ(市民階級)
④シュードラ(労働者階級)
さらに、この4つの分類には入れなかったダリット(不可触民)と呼ばれる人たちも一定数存在しました。日本でいうえた・ひにんのようなイメージです。
さらに、ジャーティと呼ばれる制度もあり、生まれた時にどんな職業につくか定められています。
「生まれたと同時に身分が決まっていて、どんなに努力しても変えることはできない」
この日本人には到底理解できないことが、当たり前のように起こっていたのです。
今ではカーストによる差別はインド憲法で禁止されて表面的な差別は減ってきていますが、やはりインド人の心の片隅や地方の田舎ではカーストは残っているそうです。
仏教と深い関係がある
先程も解説しましたが、ヒンズー教は仏教と深い関係があります。紀元前500年にヒンズー教の神であるお釈迦様が仏教を開いたのですから、何かと共通点はあるのも当然です。
人は死んだら生まれ変わる輪廻転成という考え方だったり、最終的に解脱を目標としていたり。
仏教についてはこの記事で解説しているので、合わせて読んでみてください。
ヒンズー教で守るべきこと
ヒンズー教において守るべきことはこの2つ。
①牛肉を食べてはいけない
②左手は不浄の手なので食事に使わない
それではひとつずつ見ていきます。
牛肉を食べてはいけない
ヒンズー教徒は牛肉を食べてはいけません。というのも、先程紹介した破壊と再生の神であるシヴァ神が牛に乗っているからです。
牛に乗るシヴァ神
そんな背景があって、牛の出汁や脂肪が入っている加工品(ブイヨンやラード)も食べてはいけません。ちなみに、ヒンズー教は輪廻転生の考え方があるので先祖の生まれ変わりである魚や卵も食べない人が多いです。
なので、ヒンズー教徒はベジタリアンが多いようです。
血液や唾液を汚れたものと考えるので、鍋料理のように他人と直箸で料理をつつくのはNGとなっています。
左手は不浄の手なので食事には使わない
ヒンズー教では右手は神聖な手、左手は不浄の手とされています(男子の場合。女子は逆)。
なので、食事の時だったり握手をするときだったり、基本は右手を使います。手だけでなく半身にも神聖な側が存在します。
例えば、男性は右足から部屋に入らなければならず、女性は左足から入る。そんな決まりもあるようです。
現代版脱カーストへの道
先程説明したカースト制度ですが、それも少しずつ変わり始めています。
身分は低いものの優秀な学生はインド工科大学やアメリカの大学に留学をして、Googleやマイクロソフトなどに入社するケースが増えてきました。
最近では身分の低い学生向けの奨学金もできてきましたし、ダリット(不可触民)でも頭角を表すチャンスがあるわけです。
そんな脱カーストに奮闘する学生をモチーフにしたインド映画「きっとうまくいく」は世界中で大ヒットとなりました。
学歴社会に生きてきた人ならきっと共感する部分があるはずです。僕もこの間見たのですが、人生で見た映画で5本指に入るくらい感動、学びのある作品でした。
今ならアマゾンプライム会員は無料で視聴できるので、特に学生の人は登録をして一度見ることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?
古くからカースト制度の残って仏教にも影響を与えたヒンズー教ですが、キリスト教やイスラム教と比べて信仰は自由です。
そのゆるさが多神教ならではであり、いまだにヒンズー教は体系化できていない所以でもあります。
インドに行って人生変わったという話はよく聞くので、興味のある人は一度行ってみるといいですね。
もっと詳しく知りたい人は、この本がオススメ。世界5大宗教をサクッと理解できる名書です。
また、そんな人向けに全てを網羅した記事を書きました。参考にしてみてください。