この記事はそんな疑問にお答えします。
公民や歴史の授業やテレビのニュースでよく聞く〇〇主義。一つ一つの明確な違いは分からずに何となくで終わっていませんか?
そこで今回は、世の中のことを知る上で最低限必要となる〇〇主義について解説していきます。この記事を読めば政治ニュースも読みやすくなるので、ぜひ最後までご覧ください!
まずは主要5種類の〇〇主義
まず、主要5種類の○○主義について理解しましょう。大きく2つ種類があり、
①国の政治システム
②国の経済システム
①の方では政治にまつわる民主主義など、②の方では経済にまつわる資本主義や社会主義などを解説していきます。
政治と経済をごちゃまぜにすると、民主主義の反対って資本主義だよね?といったいかにも頭の悪い発言をしやすいので注意です。それでは早速見ていきます。
国の政治システム
まず最初に政治システムについてです。ここでは
①民主主義
②君主主義
の2つを解説していきます。
民主主義
民主主義とは主権が政府や立法者ではなく国民にあり、国民による国の支配を基本する政治の仕組みを意味します。もっと簡単に言うと、ものごとを決定するときに全ての国民がその決定に参加するという考え方です。
歴史をたどれば、古代ギリシャ時代のアテネでスタートしたものと言われており、政治における原始的な仕組みと言えます。
それに、17〜18世紀のヨーロッパにおける王や貴族が支配する制度を倒すためにいくつも革命が起きたのですが、その時の中心的な考えとなっていたのも民主主義です。その後、ロックやルソーによって文面化され、自由と平等や基本的人権などを理念としました。
日本ではこの民主主義が政治に取り入れられています。
君主主義
君主主義とは生まれつき国家権力を持つ人によって独裁的な政治が行われる仕組みを意味します。身近なところだと北朝鮮がイメージしやすいでしょう。
ある一族が滅びるまで国のトップであり続け、国民はその権力者を辞めさせることができません。なので、トップを引きずり下ろすためにはクーデターや内乱、革命といった手段を行使するしか選択肢がないのです。
ただ、そんなことをすると反逆者として捉えられるので政治は腐敗していき、国がどんどん衰退していきます。
もちろん、君主主義であっても国王が極めて優秀で国民に尽くす人であれば、昔のローマ帝国のように国も大きく発展する可能性はあります。しかし、そんな素晴らしい国王が何代も続くことは稀で、どこかで歯車が狂ってしまいます。
世界一幸せな国と呼ばれる君主主義のブータンでも、2008年に国会議員選挙が実施されました。国王による政治よりも、国民による政治の方がよりよいと判断したためです。
このように、君主主義は世界的に少数の政治体制となりつつあります。
国の経済システム
次に国の経済システムについて解説していきます。ここでは、
①資本主義
②社会主義
③共産主義
の3つを紹介します。
資本主義
資本主義は、資本があらゆるエネルギー源になる経済の仕組みを意味します。百科事典には、「基本原理としては生産手段を持つ資本家が、生産手段を持たない賃金労働者を使用して利潤を追求する社会システム」だと記載されています。
いわゆる搾取する側とされる側に分かれる構造で、お金持ちはどんどんお金持ちに、貧乏人はどんどん貧乏人になっていく仕組みなわけです。
これは18世紀後半にイギリスで起きた産業革命をきっかけに生まれた理念であり、資本のために競争すれば社会全体の利益も増えていくのではないか?という考えが根本となっています。
その後アメリカをはじめとして資本主義が採用されていくのですが、貧富の格差が拡大するという問題点が浮き彫りになってきました(そもそも構造上仕方ないのですが)。
そこで出てきたのが次に解説する社会主義なわけです。
社会主義
ドイツの経済学者であるマルクスは、貧富の格差を拡大する資本主義を批判して新たに社会主義という経済システムを提唱しました。
社会主義とは国や地方公共団体などに資本を集中させて、全ての人々を労働者として平等な社会を目指す思想を意味します。
そのため、社会主義では国の計画と命令のもと生産活動が行われることが必要となり、いち早くそのシステムを取り入れたのが今のロシア(旧ソ連)の5カ年計画なわけです。世界初の社会主義国家はソ連だったんですね。
一見、資本主義の問題点を解決したように思えましたが、社会主義だと国が全てを管理して労働者を対等に扱うので頑張っても賃金が上がらないといった新たな問題点が浮き彫りになりました。
毎月50時間働いても100時間働いてももらえる賃金が同じなので、労働者は働かなくなります。その分生産性は低下して国の経済も停滞するようになったのです。
さらに一部の国の幹部が富を独占する問題も生じたので、結局ソ連は解体して今では全面的に資本主義経済が導入されています。ちなみに現在ではキューバ・ラオス・ベトナム・中国・北朝鮮で社会主義システムが導入されています。
共産主義
中国共産党トップ習近平
共産主義は社会主義をさらに発展させた考え方であり、国や政府といった組織をなくして究極に平等を主張する思想です。こちらも社会主義同様にマルクスが提唱したもので、人類史の社会体制の最終段階と呼ばれています。
社会主義と共産主義の違いは、社会主義の方が広い意味があり複数のやり方を持ちます。社会主義の選択肢の中の一つに共産主義があるという風にまずは理解しましょう。
この共産主義では、資本家や労働者といった階級は一切存在せず、国や国民といった構造も存在しません。個人が資産を保有することも禁止されており、必要なときに必要な分だけ受け取る体制です。
国という管理者がいなくても、個人の意思で全ての人が平等な世界を目指す仕組みです。ちなみに、共産主義というシステムが成功した例は過去にありません。それゆえ実現不可能な空想を目指した仕組みとも言われています。
中国は現在、資本主義の仮面を被った社会主義国家であり、最終的には共産党独裁国家を目指している少しどころかだいぶ変わった国です。
さかのぼること1949年、中華人民共和国が設立された時の最高指導者である毛沢東は「階級・国家権力および政党が消滅」した「社会主義と共産主義社会」を目指していました。しかし、その政治運動によって大規模な飢饉が起こって5000万人もの死者をだすことに。
毛沢東の死後、1970年代後半から最高指導者となった鄧小平は新たに「中国式社会主義」を掲げました。それはまるで資本主義と社会主義が融合した思想であり、例えば
・外国資本の受け入れが許可された経済特区の設立
・農民が余剰生産物を販売することが可能になった
・民営企業の設立が可能になった
こうした例を見ると資本主義のように見えますが、やはり中国政府は経済の大部分をコントロールしています。例えば、
・産業によっては政府による独占体制
・フォーチュングローバル500に含まれるトップ15の中国企業は国が所有している
・FacebookやTwitterを利用できない
共産主義の生みの親であるマルクスは最高レベルの資本主義経済を達成した国でしか成功しないという言葉を残しています。なので、共産主義を目指す中国が資本主義体制をとっているのは理解できます。
そういった視点で見ると、先日行われた香港デモは歴史的な出来事と捉えることができます。独裁政治を行う中国共産党に対抗して民主化を望んだ香港市民。今後も上からの弾圧が続くのか、それとも政治体制が民主化に向けて動き出すのか。目が離せません。
【知らなきゃヤバい】香港デモが始まった本当の理由と今後の展開【3分で解説】
主要5種の○○主義まとめ
上記に紹介した〇〇主義をまとめると、
〜国の政治システム〜
①民主主義:人民を中心として政治を行うこと
②君主主義:ある一人の独裁者が全ての権限を持って政治を行うこと
〜国の経済システム〜
①資本主義:自由な商品生産によって利潤を追求する仕組み
②社会主義:計画的生産と平等な分配によって調和のとれた社会を目指す仕組み
③共産主義:国や組織といった概念すらない平等な社会を目指す仕組み
これだけ覚えておけば、政治や歴史の話が出てきてもほぼ対応することができます。他にも知っておくべき世の中の記事をまとめたので以下も参考にしてみてください。
【今さら聞けない】米中貿易摩擦の問題をめっちゃ分かりやすく解説【日本への影響は?】
【小学生でも分かる】ように中国“一帯一路”を解説【大きな転換点です】
各主義の勉強の仕方
さて、ここまでできる限り僕の生の言葉を使って解説してみましたが、頭に入りましたでしょうか。僕はこういった勉強は、まず「知りたい」という欲求が先にないと頭に入っていかないと思っています。もっと言うと「知る意味がある」と思う必要がありますね。
受験や試験のためだけに「人生には必要がないし興味もないけどとりあえず暗記しなければ」という気持ちでこの記事を読んでもきっと理解できません。もしくはすぐに忘れてしまうと思います。
「テストで点を取りたいから」じゃない興味をまずは持ってください!僕は映画や漫画、美術鑑賞などで「ああこれわからないな知りたいな」と思ったらここぞとばかりに突き詰めて学び、しっかり頭に定着させます。エンタメと掛け合わせて「興味関心が高い」状態に脳をもっていければその時に調べた内容は一生身について忘れることがないです。
と、いうのもスタディサプリで講師をしている伊藤先生の受け売りなんですが。。
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この興味関心がまず大切というお話のほかにも、「答案から問題文がわかるような答えが最適」という話もされていてめちゃくちゃ納得しました。例えばこの記事をここまで読んでいる皆さんであれば、今「民主主義とは」という詳細説明を自分で頭に思い浮かべてみるわけです。そしてその説明を見るだけで、「この問題の問いは”民主主義とは?”だな」と思えるような内容であればしっかり身についているという、逆説的な確かめ方です。
こんな感じで非常に説得力のある授業をしてくれます。もし社会の勉強方法に困っている人がいたら、伊藤先生の授業を聞いてみてください!
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その他○○主義6種類
ここからは、民主主義・資本主義・君主主義・社会主義・共産主義以外の○○主義について列挙していきます。
自由主義
その名の通り自由!個々の自由意志を尊重する主義です。いろんな物事に対して自由主義という言い方をしますが、もし受験勉強で出てきた場合はほぼ資本主義の話ととらえていていいでしょう。資本主義は自由主義にのっとっていますよね、自由に商売できるわけですから。でも自由だからといって資本の話をしているわけではないので逆は成立しませんので注意しましょう。
国家社会主義
その名の通り社会主義のひとつ!ナチスドイツのことと思っていればいいと思います。ナチスは国家社会主義ドイツ労働者党ですから。そして共産主義とは違います。第二次世界大戦では共産主義がソ連、国家社会主義がドイツ・イタリア・日本でした。
全体主義
うーんこれは想像しにくいと思いますが、全体で統一しろ!個人が逆らうな!みたいな感じです。個人の権利よりも国家の利益!少数意見なんて知りません!という民主主義とは異なる考え方ですね。権威主義もかなり近い意味があります。
帝国主義
歴史の勉強をしていてこの記事にたどり着いた人は知りたい言葉だと思います、帝国主義。教科書にも「帝国主義の時代」なんて書いてあったりします。帝国主義は、自分の国の利益のためにどんどん他国を侵略して大きくしていこう!という考え方です。大航海時代が始まり植民地をバンバン作っていった時代によく出てくる言葉で、その後はナチスの侵略や日本の大東亜共栄圏なんかでも帝国主義的と言いますね。
民本主義
おまけ的に民本主義も。吉野作造という人が大正デモクラシー期に唱えたものです。民主主義とかなり似ているんですが、主権が国民にあると言い切ってしまっている民主主義は、当時の日本において主権は天皇にあるため言いにくかったんです。なので民本主義は主権は天皇にありながらも民衆が政治をやってこうぜという内容の民本主義を唱えました。
三民主義
こちらもおまけ、中国の孫文が唱えたもの。孫文主義と言ったりもしますね。民族主義・民生主義・民権主義のみんみんみんで三民主義です。ヨーロッパにめちゃめちゃ押されていた時代の中国が、民族でまとまって独立するぞ!民主制とるぞ!生活安定させるぞ!と気合を入れた考え方です。中華民国が無事建国されてから三民主義はちょっと定義が変わり、やがて毛沢東の新民主主義に変化していきます。
民主主義の対義語って?
ここまで読んでいただければ、民主主義の対義語が1つだけではないことがわかると思います。
まず対義語の1つは君主主義ですが、君主がいなくても民主主義じゃないことがありえますよね。民主主義の対義語は、独裁主義・専制主義・全体主義・権威主義・封建主義・軍国主義・世俗主義、などなどがあたります。ぜんぶ民主主義とは相反する考え方であり、君主がいるかどうかは問題ではないので君主主義は関係ありませんよね。
このように、○○主義はこの反対はこれだけと定義できるものではないと意識して概念を掴んでいくようにしましょう。抜けもれなく考えたいと思うと結構行き詰まると思います。○○主義は組み合わさることもありますし被ることもあるのです。
2022年今のロシアは社会主義?共産主義?ソ連は?
さて、この記事では○○主義について大枠を説明してきました。最後に、少し話は逸れますが2022年現在のロシアについても触れておいた方がいいかなと思うので追記します。
ロシアは現在ウクライナに侵攻しており、正直多くの日本人からしてみれば「なぜそんなことをするの?」と疑問でいっぱいだと思います。その糸口のひとつになればいいなと思いますし、今興味関心が高い状態だと思うので内容も定着しやすいと思います。
ロシアは昔ソ連でした。ソ連は社会主義を作った国です。社会主義という大きな枠組みを作り、その中でも共産主義という形をとっていました。この共産主義はマルクスレーニン主義とも呼ばれます。ここまではわりと簡単ですよね。
そしてソ連が崩壊し、ロシアが生まれました。ここからロシアは社会主義ではなくなります。ここがややこしい。批判として「社会主義的だ」「共産だ」などと言われるのでごっちゃになるんですが、経済体制的には資本主義に近づけていっていました。融合している感じが中国と似ていますよね。ソ連時代の独裁政権もやめ大統領を国民の選挙で選ぶなど、表向きは民主主義の形をとっています。定義としては民主主義です。
しかし、プーチン大統領は2000年から2036年まで大統領を続けることができるようにしてしまいましたし、強い情報統制をおこなったりなどとてもじゃないですが民主主義国家とは言えなくなってきます。「昔のソ連を取り戻そう!」というかのように、ソ連領であったウクライナを吸収しようと侵攻してしまいます。これがウクライナ侵攻です。
そしてアメリカのバイデン大統領はそんなロシアを「専制主義」と言いました。まーた新しい主義が出てきてしまいましたね。。。
専制主義は、民主主義の対義語と思ってください。民主主義ではないどころか真逆だよと。
専制主義が、君主主義と違うのはわかりますよね。君主主義は君主がいないといけません。プーチンは王様ではありません。じゃあ独裁主義とは違うの?というと、これはめちゃくちゃ近いです。なぜ独裁じゃないかというと大多数の民衆が同じ身分の独裁者を支持して心酔しているわけではないから…くらいに捉えておくと区別できるかと思います(本当の定義はかなり細かいのでざっくり理解でいいと思います)。ロシア国民全員がプーチン最高!と言っているわけではないことは連日のニュースで掴めますよね。。。
2022年現在ロシアは「社会主義だった国」「社会主義陣営」という言われ方をよくしますし、その時代の形に近づこうとしています。でもじゃあ本当に社会主義国家か?と言われると違います。ロシア人は今財産を没収されて国のものにされ全員平等に生きましょうー!と強制されているかというと違いますから。
そんな急転換をするなんて普通は無理!でも、とても強制力のある独裁者の鶴の一声があれば従わざるを得ないのかもしれません。そうなんです、社会主義国家にバーン!と変えるには独裁者がいるととてもやりやすいんですね。歴史的に事例がありすぎます。なので民主主義といいつつプーチンの専制主義であるロシアは、資本主義といいつつ社会主義になってっちゃうんじゃないの?という危惧は当然あり、今後はどうなっていくのか目が離せません。
と、こんな感じでロシアと社会主義の話はおしまいにします。
そして○○主義についてはまだまだ実は用語がたくさんあって、あまり授業で出てこないものも含めると無限にあるんですよね。何か主義を持っていたら○○主義ですから。今回扱えなかった○○主義についてもいずれ追記していきます!こうご期待!!今回はいったんこれで終わります!