世界史

第一次世界大戦を映画で学ぼう!受験に役立つ映画6選『キングスマン:ファースト・エージェント』他

受験に役立つ第一次世界大戦映画6選!『キングスマン:ファースト・エージェント』他

今回は、世界史の勉強になる映画をご紹介したいと思います。世界の歴史を扱ったエンタメ作品は漫画やドラマなど数多くありますが、中でも僕は映画が最もハズレなく面白く、時間も無駄にしないと思っています。

もちろん映画ですから2時間前後はかかるものなのでそこは覚悟して観ましょう。でも2時間しっかり観た映画は、登場人物からストーリーから、その後に調べた前後の史実においてまで絶対に忘れません。(個人的には漫画をダラダラ読んだ場合結構忘れてしまっていたり、あまり理解が進んでいなかったりするんですよね。なので映画をおすすめします)

僕は戦争映画を30本以上観ていると思います。有名作を上から観ていった形なのでエンタメ性としても十分楽しめ、世界史を好きになるきっかけにもなりました。

今回はその中でもぜひ受験生に観てもらいたいと思う映画、『キングスマン:ファースト・エージェント』をご紹介します。

また『キングスマン:ファースト・エージェント』は第一次世界大戦が舞台の映画ですので、その他にも第一次世界大戦を扱った映画を5つおすすめします!

キングスマン:ファースト・エージェント

第一次世界大戦の全てがここにあります!!本気で授業で取り扱って欲しいと思う映画です。いきなり史実に基づいていないアクション映画で申し訳ないですが、かなり正確な描かれ方をしているので後述します。

受験に役立つ第一次世界大戦映画6選!『キングスマン:ファースト・エージェント』他
キングスマン:ファースト・エージェント
2021年 ‧ アクション/アドベンチャー ‧ 2時間11分

キングスマンシリーズはアクションスパイ映画に属するんでしょうか。非常に面白いシリーズですよね。その3作目がこのファースト・エージェントです。でも正直1・2とは全く違うテイストになっているため、これまでファンだった方は「なんだこれ歴史映画じゃねーか」となりましたし歴史映画好きは「なに!?!?歴史映画じゃねーか!!??」と狂喜乱舞した作品です。

映画のストーリーとしては、これまでのシリーズ1・2で出てくる「キングスマン」という組織がいかにして出来上がったかというファーストストーリーを描きます。第一次世界大戦を巻き起こそうとする闇の軍団がいて、それを止めようと立ち上がる英国紳士が主人公です。英国紳士親子かな。

世界史的には、1902年のイギリスが南アフリカでボーア戦争を繰り広げているシーンから始まります。そこから第一次世界大戦前へ飛び話は進んでいきます。ここからの第一次世界大戦の描き方が本当に史実そのもの、というか史実をよりわかりやすくダイジェストでキャッチーにしたという感じで、本当に衝撃的でした。特にサラエボ事件と、ロシアのニコライ2世が革命で倒れるあたりはかなり細かく描かれています。

マシュー・ヴォーン監督のインタビューで「歴史上の出来事が登場しますが、第一次世界大戦のような戦争の詳細に沿って描く難しさはありましたか?」という質問がされます。それに監督はこう答えています。「非常に興味深い史実があまりにも多くて、そういったものを自分で思いつくことなど到底できなかった。(サラエボ事件の面白さ解説ネタバレ含む)(英国王・ロシア皇帝・ドイツ皇帝のストーリー解説ネタバレ含む)こうした事実があまりにも面白いので、変更する必要などあるのか?と感じたんだ。」

そう、第一次世界大戦の史実が面白すぎて、監督は本当にそっくりそのまま使っているんですよね。俳優陣も本当に史実上の人物そっくりでウィキペディアと見比べるとわかります。少なくとも英国王ジョージ5世・ロシア皇帝ニコライ2世・ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世についてはもう忘れないと思います。

映画のパンフレットには時代背景の年表まで載っているんですが、1882年の三国同盟成立から1907年の三国協商、1914年オーストリア皇太子暗殺、セルビアに宣戦布告、と事細かに記載されていて、最後の1919年ヴェルサイユ条約締結まで読むと「え、これ世界史の参考書?」となるほどです。

もちろん世界史の参考書だったらここまで詳しくても当然ですしジョージ5世の伝記映画だったら納得できます。でも天下のキングスマンですよ?めちゃくちゃファンも多くて面白い映画なのに第一次世界大戦の教科書になってるって凄くないですか??

ということで世界史で受験しようと思っている人には本当におすすめしたいナンバーワン映画です。2時間ちょっとで観られるのでぜひ!U-NEXTで購入できると思います。

大学入試共通テスト世界史に役立つか?検証してみた

さて、ここまで推してきた『キングスマン:ファースト・エージェント』。この映画で得た知識が実際共通テストで活かせるのかを検証してみました。

まず映画はボーア戦争から始まります。1899~1902年に起こったボーア戦争(南アフリカ戦争)(ブール戦争)とは、イギリスがボーア人が建国したトランスヴァール共和国・オレンジ自由国に対して起こした侵略戦争です。ボーア人が激しく抵抗したが、イギリスは両国を破って併合しました。

ボーア戦争の知識がないと解けない問題は2010年センター試験にて『金鉱が見つかったトランスヴァール共和国は,フランスに併合された。』の正誤を問う問題が出題されました。キングスマンの主人公属するイギリスに併合されたので答えは×です。アフリカをフランスとイギリスで取り合っていたので、映画を観ていない人は間違えやすい問題ではあります。

大学入試共通テスト2022年実施分(令和3年度)においてもしょっぱなから出題されています。南アフリカ共和国の歴史について述べた文の中から適当なものを選ぶという問題。答えは『人口において少数である入植者の子孫による支配が続いた』であり、これもキングスマンの流れを見ていたらわかります。入植者とはイギリス人のことですね。

また、同じく大学入試共通テスト2022年実施分(令和3年度)において第一次世界大戦の知識を問う問題もあります。『第一次世界大戦でこの2国(フランス・ドイツ)は交戦し、敗れたドイツは、両国国境地帯の二つの地方をフランスに割譲しました。』これは正解なのですが、キングスマンではあまりここは詳しく描いていません。フランスの話は出てきませんからね…でも第一次世界大戦の両陣営については何度も触れていますので、フランスとドイツが交戦したというのは記憶できていると思います。アルザス=ロレーヌ地方の割譲については別途知識を入れる必要があります。

このように、その年の大学入試共通テストで1回以上は第一次世界大戦周りの知識が聞かれると思った方が良いでしょう。キングスマンを見ることで必ず受験対策になると思います!

第一次世界大戦に関わるその他の映画

では、他にも参考になる映画はあるのでしょうか?もちろんあります!第一次世界大戦に興味が沸いた人は、以下の映画もぜひ見てみてください。『受験の問題が解けるようになる順』ではなく、単純に面白いと思う順番でご紹介します。

1917 命をかけた伝令

1917 命をかけた伝令
1917 命をかけた伝令
2019年 ‧ 戦争/ドラマ ‧ 1時間59分

1917もわりと最近の映画ですね。あらすじは以下です。

『第一次世界大戦下の西部戦線ではドイツ軍の後退が始まり、イギリス軍は追撃に出ようとする。しかし、それはドイツ軍の罠だった。危機が迫る最前線への通信手段が途絶える中、若き兵士2人が呼び出され、翌朝までに作戦中止の命令を届けるよう指令を受ける。』

西部戦線でドイツVSイギリスの話です。面白いのがこの映画、ワンショット撮影と呼ばれる手法を取り入れているところ。一度もカットが途切れることなくぬるぬるぬる~~~っとカメラがまわり続けるんです。なのでダッシュで逃げるところなんて本当に走っている気持ちに!臨場感が半端じゃない!!塹壕を縫うように進むところも後ろからまるで自分も塹壕の中にいるかのような撮影でしびれます。塹壕フェチ大歓喜映画でした。

伝令を届けるため、どんどん進んでいく様子がまるでRPGのようで楽しめます。ドキドキもずっとありますけどね。主人公が本当に嫌味なくいいやつなので感情移入しやすく、戦争映画ですがそこまでグロくない。高校生にもおすすめできる映画です。

さて、大学受験世界史で使えるのか?というところですが、第一次世界大戦において塹壕が使われたこと、西部戦線が硬直したこと、新兵器である戦車が現れたこと(これは後期です)、そして何より1917年という年号!!!これ絶対もう忘れないですよね。イチキューイチナナと読む…と思うんですけど、1917年が第一次世界大戦下であるという年号を一生忘れないことによって受ける利益ってすさまじいですよ。正しくは1914年にスタートし1918年に終わるんですが、結構もう戦局が進んでいるところなので後半戦だと掴めるのではと思います。

アラビアのロレンス

アラビアのロレンス
1962年 ‧ 戦争/ドラマ ‧ 3時間42分

いやまず時間見てください。4時間近い!!長くて見る気にならないですよね?そんな戦争のドンパチを4時間も…と思うかもしれません。でも大丈夫。優雅な音楽がほとんどで、画面に映るのは美しい砂漠ばかりです。いやそれだけじゃないんですけどねもちろん、でもドンパチを4時間見続けるという感じではないので安心してください。

概要は以下です。

『自伝を基に、アラブ民族を率いてトルコと死闘を繰り広げた英国将校T・E・ロレンスの苦悩と挫折を壮大なスケールで描いたオスカー作品賞受賞のスペクタクル歴史劇』

主人公はこのアラビアのロレンスです。第一次世界大戦中にアラブ民族国家の独立運動を支援したイギリスの将校。そして彼は世界史における『二枚舌外交』の当事者でもあり被害者にもなるという物語です。イギリスがアラブにもユダヤ人にもいいかっこしてしまう話ですね。今のイスラエル問題にも通じる話なので、ここをしっかりと理解しておくと世界史だけでなく現代史にも強くなれます。

オスマントルコとアラブの戦いが舞台なので、ややこしくなりがちなトルコ周りも復習できます。世界史学習の教材としてはとても良いと思いますね。面白いし。世界史の参考書『荒巻の新世界史の見取り図』にもアラビアのロレンスというワードが出てきますし、いろんな参考書でおすすめされている映画です。ただ現代の高校生には少しテンポが悪いと感じるかもしれないな。。。

西部戦線異状なし

西部戦線異状なし
西部戦線異状なし
1930年 ‧ 戦争/ドラマ ‧ 2時間32分

第一次世界大戦といえばこの映画!と知っている人も多いんじゃないでしょうか。かなり昔の映画なので白黒だと思います。でも僕は世界史の授業で先生から「絶対に観ろ」と圧をかけられてしっかり観ました。これも教科書レベルですね。でも受験のためになる知識が得られるというよりは、なぜ世界は戦争に向かっていってしまったのか?当時を生きていた若者たちはどういう気持ちだったのか?というのが心底わかる映画です。

大抵の戦争映画というのは既に兵士である主人公やその仲間たちが登場するので、その前後が描かれないことも多いんですよね。でもこの『西部戦線異状なし』では「戦争に行きたいぞー!!」という若者をしっかり描いてくれています。そしてこの若者たち、ドイツ兵側なんです。そう、敗戦国側が主人公で描かれるとても珍しい映画なんですね。(制作したのはアメリカですから、イギリスやアメリカを主人公に据えることが通常多いです)

戦争の過酷さをドイツ側から描くという視点も楽しめる、不屈の名作です。

彼らは生きていた

彼らは生きていた
彼らは生きていた
2018年 ‧ ドキュメンタリー/戦争 ‧ 1時間39分

これは2つ前に紹介した『1917 命をかけた伝令』と全く同じ年代が描かれているドキュメンタリーです。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンが手掛けました。戦時中の記録映像を集めた、ほぼセリフや音楽のない映像なんですが、それがリアルで没頭できます。1917とセットで鑑賞している人が多いですね。昔の記録映像を今の技術でカラーに修復し、かなり見やすくなっています。今撮影した映像ではなく、本当に当時撮影された映像だからこそ伝わってくるものがあります。本気で第一次世界大戦を浴びたい人におすすめ。

ジョニーは戦場へ行った

ジョニーは戦場へ行った
ジョニーは戦場へ行った
1971年 ‧ 戦争/ドラマ ‧ 1時間51分

「一番好きな戦争映画は?」と聞くと、戦争映画オタクはこの『ジョニーは戦場へ行った』を挙げることが多いです。

昔の戦争映画ってプロパガンダとして作られているものが多くて、「戦争って辛いけど皆頑張ってる!友情・努力・勝利!みんなもぜひ志願しよう!」みたいな感じなんですよね。でもこの『ジョニーは戦場へ行った』はモロ反戦映画なので、戦争のたびに絶版と復刊を繰り返してしまいます。そのくらい問題作ですが、今の「戦争なんて絶対だめに決まってるっしょ」という現代人から見ると嘘偽りなく描かれているレアな映画とも言えるのです。

そもそもタイトルからして煽っていて、原作のタイトルは『ジョニーは銃をとった(Johnny Got His Gun)』なんですが、第一次世界大戦時の志願兵募集の宣伝文句で「ジョニーよ、銃をとれ(Johnny Get Your Gun)」という呼び掛けをしていたんですね。めちゃくちゃな皮肉なわけです。そりゃ戦時中は絶版にされちゃうよね。。。

あらすじは以下です。

『戦争によって意識ある肉塊と化したひとりの青年を描いたD・トランボの小説を自身の脚色・初監督で完成させたトランボ渾身の反戦ドラマ。ジョーは今、野戦病院のベッドで静かに横たわっている。第一次大戦の中、彼はほとんどの器官を失う大怪我を負いここに運ばれてきたのだ。真の暗闇の中でジョーは想う。』

戦争シーンよりも病床シーンが多く使われており、戦争とは何だったのか、生と死とは、生きる意味とは。。。と、大変に考えさせられる映画です。

この映画は世界史の受験ではまったく使いどころのない映画なんですが、戦争映画にハマった人はぜひ観てみてください!

第一次世界大戦を映画で学ぼう!

『キングスマン:ファースト・エージェント』と、その他第一次世界大戦を舞台にした映画を5つご紹介いたしました。これを全部見れば第一次世界大戦のプロです。いや映画を観ただけで問題が解けるかと言われるとそうではないんですが、世界史の勉強と平行してこういったエンタメ作品にも触れることで、知識の定着になります。映画を観た後は時代背景や考察サイトなども検索して読み込むとより知識が深まりますよ!