この記事はそんな疑問にお答えします。
現在日本でも大きく取り上げられている香港での大規模なデモ運動。
警察官がデモ参加者に発砲をしたり、火炎瓶を投げ合ったりと、そういった事実ばかり報道されている中で、
と疑問に思う人も多いはず。
そこで今回は香港のデモが始まった理由と今後の展開を3分で解説していきます。
香港のデモはなぜ起きているのか
先に結論から言うと、現在香港で起きているデモは逃亡犯条例の改正案に対するデモです。
逃亡犯条例を平たく説明すると、香港が協定を結んだ国や地域に、罪を犯した容疑者を引き渡す制度です。
実際に具体例で考えると分かりやすいのですが、昨年の2月に香港人の男性が台湾にて恋人を殺害し、逮捕前に香港に戻るという事件が起こりました。
当時、香港と台湾は逃亡犯条例の協定を結んでいなかったので容疑者を台湾へ身柄拘束することができず多くの批判を受け、それをマズイと感じた政府がこうした条例改正をする運びとなったわけです。
治外法権と似たイメージを持っていただければ大丈夫です。
香港は台湾だけでなく中国とも協定を結ぶと改正案を提出しました。
するとどうなるか。
この改正案が通れば中国当局が国の一部である香港の市民を簡単に取り締まることができるようになります。
例えば、中国政府に批判的な立場をとる人を中国本土に引き渡し、中国の法律で裁くといった可能性が出てくるわけです。
香港はもともとイギリスの植民地でしたが、1997年に中国に条件付きで返還されました。
その時の条件が何だったかというと、
①一国二制度を取り入れ、香港は中国の一部とする
②返還から50年は外交と国防問題以外で高い自治性を維持する
こうした背景もあり、返還後の香港は特別行政区となり独自の法制度や国境を持つほか、表現の自由などの権利も保障されています。
例えば、中国国内にありながら1989年の天安門事件について市民が追悼することができるかず少ない場所です。
そんな中で逃亡犯条例が改正されると、今まで以上に中国の干渉が生じて自分たちの自由がなくなるのではないか、そう考える反中派によってデモが繰り広げられています。
結論から言うと、香港政府は9月4日に正式に改正案の撤回を公言しました。
しかし、いまだにデモ活動は終わっていません。
なぜでしょうか?
改正案撤廃後もデモが終わらない理由
逃亡犯条例改正案が撤廃されてもデモが終わらない理由は、他に目的があるからです。
その目的とは、
①市民活動を「暴動」とする見解の撤回
②デモ参加者の逮捕・起訴の中止
③警察の暴力的制圧の責任追求と外部調査実施
④香港行政長官の辞任と民主主義選挙の実現
①〜③は警察を追求する項目であり、香港当局はこれまでのデモ活動において2000人以上を逮捕、200人以上を暴動罪で起訴をしています。
デモ参加者にとっては、デモを暴動と認定した政府の見解の撤回を強く求めています。
というのも、元々100万人規模で街頭で平和的なデモをしていましたが、政府が市民の声に耳を傾けることが一切なかったために、一種の表現の自由として実力行使という手段をとったからです。
表現の自由を暴動と認定されれば自由が一切なくなってしまいます。
それが④と関係するのですが、現在の香港では真の意味での民主選挙が行われていません。
香港政府のトップの行政長官は、選挙委員会に属する1200人によって選出されるのですが、その数は全有権者のわずか6%にしか過ぎず、構成も中国政府寄りとなっています。
というのも、その選挙委員を選ぶのは一般市民ではなく、産業界の代表や立法会議員などの限られた人だけだからです。
その立法会の議員の大部分が親中派なので、必然的に国の上層部は親中派が多くなるわけです。
こうした背景があり、2014年に選挙の民主化を求めた反政府デモ「雨傘運動」が起きました。
そして今も、表現の自由を守って真の意味での民主選挙を実現するために、逃亡犯条例改正案の撤廃が決まってもデモを続けているわけです。
覆面禁止法が発令
そうやってデモを続けていた最中、10月4日に香港で覆面禁止法が発令されました。
これはデモ参加者が顔をマスクなどで覆うのを禁止する法律です。
政府側がデモ参加者の身元特定が困難であり、それがデモを助長していると判断した結果制定されました。
違反すると約30万円以下の罰金や1年以下の禁固刑が課されます。
顔をどの範囲まで覆うことを禁止するのか、といった細かい部分は決まっていないので、政府側が都合のいいように作ったルールとしか思えません。
また、先ほど説明した台湾で女性を殺害した香港人の男性が、別の罪で服役した刑期を終えて出所しました。
この男性の今後の措置を巡って香港と台湾の意見が対立しており、これが新たな衝突の火種となるかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
そもそも逃亡犯条例改正案の撤廃を求めて始まった大規模なデモですが、当初の目的達成後もいまだにデモは続いています。
もはや泥沼と化しています。
空港がデモの舞台となった場合、全便延期という事態も過去に起こっているので、香港に旅行もしくはトランジットを考えている人は事前にきちんと確認をしておきましょう。