もうすぐ大学生となる高校3年生の方や、現在大学生の皆さんは、「18歳に成年年齢が引き下げられた」ということをご存じだと思います。
これまで長らく日本では成年年齢を20歳と定めてきました。成人式をするのも20歳ですし、お酒やタバコが違法でなくなるのも20歳からです。選挙権も20歳からでした。
それが、18歳から「大人」になりました。大学生は全員大人ということになりますね。
大人には自分で自分のことを決められる自由や権利がありますが、それと同時に責任も出てきます。最も大きな影響があるのが「消費者トラブル」ではないでしょうか。
大学生になり様々な消費活動を行うことによって、トラブルに巻き込まれる可能性も多くなります。コロナ禍で誰にも相談できず泣く泣くお金を払ってしまったという人も少なくありません。
今回はそんな消費者トラブルについてみていきたいと思います。
成年年齢とは?
そもそも、成年年齢とは何なのでしょうか?これは、法律で定められているものです。
民法においては、成年年齢について「単独で契約を締結することができる年齢」「新権に服することがなくなる年齢」の2軸で記載があります。
自分の判断で様々な選択をできるように環境を整備することと、積極的な社会参加を促すために成年年齢が引き下げられました。
簡単に言うと「親に頼らずに生きていける!」「でもその分責任も伴う」ということですね。
消費者トラブルに注意
若者に多い消費者トラブルを見ていくと、「契約」が絡むトラブルがとても多いんです。契約は成年になれば独自に結ぶことができるわけですから、成年になるということは自分の責任で契約をしていかなければならないということです。
トラブル例:
・出会い系(サイト・マッチングアプリ)
・SNSきっかけ(誇大広告・相手からの勧誘)
・異性・恋愛(デート商法)
・もうけ話(副業・情報商材・暗号資産・マルチ商法)
・借金・クレカ(借入利用誘導・無理な利用・リボ払い)
・美容関連(エステ・美容医療)
・定期購入(健康食品・化粧品・サブスクリプション)
・新生活関連(賃貸住宅・電力契約)
・通信契約(スマホ・ネット回線)
・仕事関連(就活商法・オーディション商法)
民法における契約とは
「申込」と「承諾」という相対立する意思表示の合致によって成立する法律行為
これが民法で規定されています。
契約は契約書がなくても、口約束でも成立するので注意!安易な「わかったよ~」によって契約してしまいトラブルになる可能性もあります。
未成年者取消権
「未成年」と「成年」の大きな違いは、未成年者の時は守られていても成年になると守られなくなることがあります。民法には未成年者取消権というものがあり、未成年者が単独で契約を締結してしまった場合、取り消すことができる規定があります。
しかし今回成年年齢が引き下げられ、大学1年生である18歳・19歳の契約は守られていません。
「18歳を過ぎたけど実家で暮らしているから大丈夫だろう」「最終的に親を呼んだらなんとかなるだろう」という考えは非常に安易です。気を付けましょう。
もうけ話にまつわる消費者トラブル
暗号資産や情報商材、マルチ商法にまつわるトラブルが近年非常に増えてきています。
暗号資産は「必ず儲かる」という謳い文句で大きなお金を振り込まされてしまい、その後連絡がつかない、といったケースです。
暗号資産の仕組みについてよくわかっていないにも関わらず、「簡単に言うとこうだよ」という説明を鵜呑みにし騙されてしまうのです。
情報商材は、「必ず儲かるノウハウを教えてあげる」という謳い文句で情報を売りつけてきます。そしてそれを購入して、マニュアル通りに真似をしても、もちろん必ず儲かるわけはありません。失敗する人がほとんどです。
そして、最後にマルチ商法について。マルチ商法とは、商品やサービスを契約し、次は自分がその商品の勧誘者となり紹介料を得る商法です。
のちのち儲かるからという理由で最初に大きなお金を払わされたり、友達を何人も紹介し続けなければならず気が付いたら友達が全員いない・信頼を失った、ということに繋がります。
マルチという言葉は広く浸透していますが、マルチと気付かずにカフェなどで気軽に話を聞いてしまい騙されてしまうというケースが後を絶ちません。
消費者トラブルの基本的な対応
まず、前述したような儲け話に出会ってしまった場合。多くの人は途中で「怪しいな」「本当にこのまま契約していいのかな」という懸念を抱きます。でも、もう話を聞いてしまっているから、途中で逃げ出したらかっこ悪いから、断る方が面倒くさそう、先輩だから断りにくい、などという理由から契約してしまう場合が多いです。
これの対応策はただ一つ、「勇気を出して断る」ことです。これに尽きます。
断れなくても、その場を回避するために一旦持ち帰らせてもらいましょう。サインをする・捺印をするような場面は必ず回避しなければなりません。その場でお金を払わなければならない時もそうですね。
もしも、今日払わないといけない・今日サインが必要だから、と言われても、そんなはずはありません。「後日にさせてくれ、そうじゃないと契約できない」と強く言うことが大切です。
また、きちんと契約を読み込まずにとりあえずサインをしてしまい後から騙されたとわかるケースもありますね。
向こうも言葉巧みに難しい書類を並べて「とりあえずここにサインしてくれればいいから」「この1行だけ読めば大丈夫だから」などと言って面倒な作業を省いてこようとします。
ですが、どんなに細かい字のどんなに難しそうな契約書であっても目を通さないということはあり得ません。流し読みでもいいですから必ずすべての文字を追うべきです。
クーリング・オフ
ここまでお話したように、大学生は18歳・19歳であろうとも今後単独で契約を結んでしまえば安易に解約ができません。
うまい儲け話に騙されてしまった場合、もうどうすることもできないのでしょうか?
いえ、そんなことはありません。ここで注目していただきたいのがクーリング・オフという仕組みです。このクーリング・オフのルールを知っているだけでトラブルを回避することができます。
クーリング・オフとは、いったん契約を締結させてしまった場合でも、一定の期間であれば無条件で契約の申込みを撤回したり解除したりできる制度です。
主に8日間のものと20日間のものとあります。8日間の方が事例は多いですから、のんきに構えず「1週間以内になんとかしないといけない」という意識を持ちましょう。
キャッチセールスやエステ・美容医療契約、家庭教師や塾などの習い事、結婚相手紹介サービス、訪問販売などはすべて8日間のクーリング・オフです。
1万円という広告を見たが実際は定期コースで合計100万円が必要だった、などというケースですね。または整形手術をしたけれど痛いままであったり腫れがひかなかったりして不安だらけなのに誰にも相談できない、取り合ってもらえないなどというトラブルもあります。
例えば、美容医療は1か月を超えるもので金額が5万円を超える場合、8日間はクーリング・オフが可能です。期間を過ぎていても中途解約が可能です。
ここで落とし穴なのですが、通信販売で定期コースを契約してしまいそれが高額だった場合、クーリングオフができないケースが多いです。
通販の場合はより一層注意して、もしも解約したいときにできるかどうか確認してから契約をするようにしなければなりません。
20日が設けられている事例で最も多いのはマルチ商法にひっかかってしまった時でしょう。
暗号資産や情報商材などのもうけ話を持ってこられたときに、それがマルチ商法と気付かずに契約してしまうケースがあります。
マルチ商法の場合は、契約書面を受け取ってから20日以内に無条件で解約が可能なのです。
マルチ商法にかかってしまい、悩んでいる間に20日経ってしまうと解約がかなり難しくなります。お金が発生してしまうこともあるでしょう。
もし「あの話怪しいな」「ついOKしてしまったけど本当はやりたくない」などという気持ちが少しでも芽生えたならば、誰か身近な大人に相談し、20日以内に決断することが大切です。
また、悪質な業者であればクーリング・オフを妨害してくる場合があります。できるはずなのに対象外だと言われたり、脅されたりしてクーリング・オフをできないようにされてしまうことですね。
この場合は決められた期間が過ぎてしまってもクーリング・オフができますから、諦めずに消費者庁に訴えるなどしてしっかり解約・返金対応をしてもらいましょう。