この記事ではそんな疑問にお答えします。
イギリスがEUから離脱を図る“ブレグジット”についてニュースで聞いたことがあるかもしれません。
しかし、なぜこのような動きが起こったのか、今後イギリスと世界各国の関係がどうなるのかまで知っていますか?
そこで今回は、ブレグジットがここまで長引いている本当の理由と、仮に離脱した場合に日本にどんな影響があるのかを世界一分かりやすく解説していきます。
3分で読めるように内容をギュッと凝縮したのでぜひ最後までご覧ください。
ブレグジットの意味
そもそもブレグジット(Brexit)は、Britain(イギリス)+Exit(出口)からできた造語を意味します。
2016年6月23日の国民投票の結果、投票者の51.9%がEU離脱を選択したことで、一気にこの造語の知名度が高まりました。
では次に、イギリスがEU離脱を目指す理由を解説していきます。
なぜイギリスはEU離脱を目指すのか
イギリスがブレグジットを進める理由は以下の3つ。
①EUへ支出する予算の削減
②イギリスに流入する移民を制限するため
③EU独自の法律が足かせになっているため
それではひとつずつ見ていきます。
EUへ支出する予算の削減
イギリスがEUから離脱したがる理由の1つ目は、EUへの過剰な資金支出です。
EUは加盟国間の経済格差が大きく、イギリスのような豊かな国がギリシャのような貧しい国を支え合う構図となっているですが、そうやって貧困国に対して1兆円ほど予算を出しても肝心のイギリス自体にたいした利益はありません。
経済破綻で一時期ニュースとなったギリシャの高速道路は、イギリスが出したお金で作られていますが、イギリス的には道路くらい自分たちで作れと思っています。そりゃそうですよね。
元々イギリスは経済的な動機でEUに加入したので、過剰な資金援助するばかりで手元に戻ってこない現状に不満があるわけです。
それにイギリスはEU共通通貨ユーロではなくポンドという独自の通貨と中央銀行を持っていること、国境を越える時に入国カードを記載することなど、EUから距離をとって自国の権利を守る文化が歴史的に存在しています。
そういった背景もあり、今回の離脱の機運が高まったのでしょう。
イギリスに流入する移民を制限するため
離脱を望む2つ目の理由としては、流入する移民を制限するためです。
EU加盟国内のヒトの行き来は自由であり、貧困国から多くの移民がイギリスにやってきました。
グラフの通り毎年20万人ほどがEU内からイギリスに流入していたわけです。
もちろん移民もイギリスの行政サービス(病院や学校教育)を無料で受けることができますが、あまりに増えすぎて行政が機能しなくなりました。
住む家も足りなくなり、電車やバスは大混雑で年々運賃が上昇。移民の大半は英語を話すことができずに、学校の授業もままなりません。
スコットランドのグラスゴーという街の学校は、222名の生徒のうちスコットランド出身は0、181名がルーマニアもしくはスロバキア出身で、教育予算が不足しているので英語を教える教材すら手に入らないそうです。
もちろん、そういった移民は低賃金でイギリス人がやりたがらない肉体労働などに従事しているので、必ずしも邪魔者ではありません。
ただ、移民の数が増えすぎても困るので制限したい。制限したいけど、それをやるとEUの法律に反するのでできない。
こんなジレンマが背景にあって、離脱を考える人が増えたわけです。
EU独自の法律が足かせになっているため
先ほどEUの法律というワードを出しましたが、この法律も離脱の原因です。
関税を撤廃してEU内の経済を活性化することが当初の目的でしたが、加盟国が増えるにつれてお互いの利益を調整するための謎の法律が増えてきました。
例えば、こんな感じ。
・掃除機の吸引力がすごすぎてはいけない
・キュウリとバナナは曲がっていてはいけない
・ミネラルウオーターのボトルに「脱水症状を防ぐ」と書いてはならない
こんな馬鹿げた法律が増え、イギリスがやりたいことがあっても一旦EUを経由する必要があって、物事が進むまでに時間がかかります。
ヨーロッパから日本に輸入するワインやチーズが安くなるEPAも、日本とEUの協定ですが、イギリスが独自に日本と交渉しようと思ってもできないわけです。
そうやってイギリスは自分たちの得意な産業を守るために、EU離脱を考えているわけです。
GDPが世界で5番目の経済大国であり、大英帝国時代の仲間もいて貿易先には困らないだろうという自負もあるわけですね。
では次に、イギリスのEU離脱が長引いている理由を解説します。
EU離脱が長引く理由
上記の3つの理由でイギリスはEU離脱を望んでいますが、実際はかなり時間を要しています。
国民投票によって離脱が決まったのが2016年なので、すでに3年もの歳月がかかっていますね。
元々2019年10月31日に離脱期限が定められていたのですが、その期限を2020年1月31日に延期することが決まりました。
ここまで離脱が長引いている理由は以下の3つだと言われています。
①北アイルランド問題
②議会で案が通らないから
③ジョンソン氏の奇策
それではひとつずつ見ていきます。
北アイルランド問題
EU離脱が長引く要因として、アイルランド問題があげられます。
元々アイルランドはイギリスの統治下にありましたが、北アイルランドを除いて独立をしてEU加盟国となりました。
つまり、北アイルランドはいまだにイギリス領なわけです。
取り残されたアイルランド系の人は就職などで差別を受けることもあり、イギリスからの分離を求めて激しい紛争を起こしました。
それをアイルランド問題と呼び、テロなどで約3000人が亡くなった悲惨な過去があります。
その紛争が終わりを迎えた時に、北アイルランドとアイルランドの国境の移動を自由にすると決められたのですが、イギリスがEUから離脱すると再び国境の移動や関税といった問題が生じ、悪夢が蘇るのではないかと懸念されています。
メイ首相は、EUから離脱はするがアイルランド問題に関して良い解決策が見つかるまではEUの関税の中にとどまるという折衷案で離脱協定案を作成しました。
しかし、これだとEUの関税というルールに縛られ続けるかつEU内での発言権がなくなるというデメリットがあります。
答えはNOです。議会で3度も否決されたので、話は一歩も前に進みませんでした。これが長引いている理由の2つ目です。
議会で案が否決されるから
EU離脱をする場合は、
①EU加盟国の全ての国に承認されること
②イギリス議会で承認されること
が必要不可欠です。イギリスの議会は与党の保守党と野党の労働党から構成されているのですが、メイ首相が折衷案を提案した際に身内の保守党からも
と反対派が出てきました。
それだと議会から同意を得られる可能性はゼロに近く、結局3回も否決された結果、メイ首相は辞任を余儀なくされます。
その後、新たな党首を決める総選挙が行われることとなり、ジョンソン氏が当選しました。
そして、ここで当選したジョンソン氏が講じた策が、さらに離脱を長引かせる原因だったのです。
ジョンソン氏の奇策
イギリス議会は、8月中は夏休みで9月3日に再開したのですが、ジョンソン氏はまた議会を閉会する奇策を取りました。
というのも、メイ首相が議会を説得しようとした結果不都合が生じたからです。面倒なことは無視しようとしたわけですね。
ただ、イギリスは議会民主主義発祥の地とされているので、ジョンソン氏の奇策に反対する市民や身内の保守党員が野党に協力する形をとり、期日までにEU側と合意できなければ2020年1月末まで離脱期限を延期するという法律を作りました。
議会制民主主義・・・国民の代表である議会が立法の元に意思決定を行い政治体系
元々選挙の際、ジョンソン氏は10月末までに必ずEU離脱を実現するという公約を掲げていたので、その法律によって首相の手足を縛ったわけです。
こうした背景もあり、議会は普段通り開催されてEU離脱への議論を進めていましたが、2019年10月28日に正式に、ブレグジット期限を2020年1月31日に延期することで合意しました。
結局ジョンソン氏の公約は守られることがなく、今後は再度総選挙を行うのではないかと予想されています。
追記(2019.12/13)
12月12日に総選挙が行われ、与党である保守党が過半数を超える365議席を獲得しました。これによって離脱に向けた法案は議会で承認されるので、2020年1月におけるEU離脱が現実的なものとなりました。
では最後に、EU離脱による私たちへの影響を見ていきます。
イギリスEU離脱による日本への影響
もともと日本企業は欧州におけるビジネスの入り口としてイギリスを活用してきたので、イギリスに会社を置く企業は少なからず影響を受けるでしょう。
ホンダもイギリスにある工場の閉鎖を決め、日産も次期モデルの生産撤回を表明しています。
ブレグジットによってイギリスとEUにそれぞれの拠点を置く必要がある場合、コストは増えるが利益の増加は約束されていない、そんな状態となってしまいます。
ただ、日本的にはアメリカ、アジアに次ぐ第3の市場なので、影響はあくまで限定的という見方もあります。
イギリスが独立することで個別に貿易が活発になり、輸入品が安くなる可能性もあるので、今後の動向に目が離せませんね。
まとめ
いかがでしたか?
イギリスがEUから離脱したいと考える理由は
①EUへ支出する予算の削減
②イギリスに流入する移民を制限するため
③EU独自の法律が足かせになっているため
そして、ここまで離脱が長引いている理由は以下の3つだと言われています。
①北アイルランド問題
②議会で案が通らないから
③ジョンソン氏の奇策
今回の総選挙で2020年1月のEU離脱がほぼ確実なものになりました。なおさら今後の動向から目が離せませんね。
ちなみに、最近話題の香港のデモについてこの記事で解説しました。
参考にしてみてください。